目次
図書館で児童書を借りる
私は特に読書家というわけではないんですが、たま~に、ふらっと図書館に立ち寄って児童文学系の本を借りて読むことがあります。
昔から著者にはこだわりがないので、背表紙、題名がなんとなく気に入った「トレマリスの歌術師〈1〉万歌の歌い手」(3部作)を適当に選んでみました。
で、これが、なかなか楽しめたので、レビューしてみようと思います。
「トレマリスの歌術師」のあらすじ
まず、簡単なあらすじとしては、以下のような感じになります。
氷の壁で囲まれた、「歌術」という魔法が使える巫女たちが住む場所で、見習い巫女として生活している主人公の少女、カルウィン。
好奇心旺盛で落ち着きのないカルウィンは、単調な毎日になんとなく不満を感じつつもそれなりに見習い巫女としての生活をこなし、近々、一人前の巫女となる儀式が行われる予定だった。
そんな中、氷の壁に不具合がないか確認するために、歌術を歌いながら壁沿いを歩いていた時、壁の中に外地の男が倒れているのを発見する。
歌術で造られた氷の壁は外地の人間は決して越えられないはず。
無理に越えようとすると、女神の罰が下る。
側に駆け寄ると、案の定、倒れた外地の男も足に酷い怪我を負っていた。
外地の者は決して受け入れてはならない、しかし、怪我人を放っておいてよいのか…。
カルウィンは悩んだ挙句、男を背負い、巫女達の住まう場所へと歩いて行った。
それが、彼女の人生を大きく変え、様々な出会い、喜び、悲しみを経験することになる第一歩であるとも知らずに…。
という感じです。
感想
主人公が少女なのが嬉しい
まず、読み始めから、主人公が少女であることが嬉しかったです。
というのも、ファンタジーもの、冒険ものって、主人公が男性なことが多い気がするんですよね。もっと女の子や女性が主人公のファンタジー小説を読みたいなあといつも思っていたんです。
幼い頃を思い出すファンタジー世界
それに加えて、私は児童文学にしろ大人向けの小説にしろ、ファンタジーものやSFものが大好きです。
単純にワクワクするし、現実の枠を取り外して表現された世界の方が、より著者の伝えたいことが高い濃度で直接的に感じられる気がするからです。
で、読み進めていくと、これぞ児童文学、という優しさと爽やかさに溢れていて、幼い頃、図書館で適当に借りた子供向けのファンタジー小説を部屋でお菓子片手に暗くなるまで夢中で読んでいた頃の感覚が鮮明に蘇ってきました。
でついつい読み耽り、思わず、3部作の全てを一気に読んでしまいました。
なかなか面白かったです。
児童文学にしては、仲間や敵の死が多いのがちょっと気になり、これ死ぬ必要あるかなあ?と思う部分もありましたが、基本的には優しい物語です。
恋愛描写はちょっとステレオタイプ的
あと、恋愛要素も少しあり、その部分では、主人公のカルウィンがなんだか少女漫画の主人公みたいに相手の男性のことばかり考えていて、他の重要な事柄が手につかない、みたいな描写があり、ちょっと不満でした。
なんでも恋心を中心に考えちゃう、とか。
なんで、女の恋愛は、いつも相手に夢中で恋のことしか考えられない、みたいなステレオタイプな描写のされ方しかしないのかなあ、と思いまして。
もっと、男性主人公のように、恋愛と自分がやるべきことは分けて考えられる冷静さを持った女性だっていると思うのに…と私は思うのですが。
歌術という独特なアイディアが面白い
まあ、それでも全体的には、適度なワクワクもあり、楽しめました。特に、単なる魔法という表現ではなく、「歌術」という特殊な歌い方で歌うことによって、魔法を起こす、という独特なアイディアが面白かったです。
歌うことで、何かを創りだしたり、攻撃したりする、というのはすごく女性的な発想だなあ、と。
攻撃、という動作にさえも、繊細で優美な美しさを求める感性が女性作家ならではな感じがします。
ライトノベル的な児童文学という印象
正直、読んだ後に深い何かが残る、ということはなかったですが、ちょっと気分転換したい時に読むには丁度よい軽さでした。
深い感銘を受けたり、深いメッセージが込められた小説は、それを読むのにもすごくエネルギーがいるので、そこまでのエネルギーは今はないなあ、という時に読むのには最適だと思います。
例えるなら、ライトノベル的な児童文学と言う感じかな、と思います。(ライトノベルを読んだことがないので、想像ですが。)
それに、ちょっと全体的に少女漫画的な雰囲気も感じます。(私はあんまりそういう雰囲気は好きじゃないです。)
女性ってこういう展開好きでしょ?感を感じるというか。
いや、そういうの好きじゃない女性もいますよ、と。
論理性、冷静さに欠けすぎる、と思ってしまうことが度々ありました。
また、ちょっと主人公が万能すぎかなあ、とか、ちょっとご都合主義的な部分もあるかなあ、とは思いますが、ファンタジーだし、ライトノベルだし、って感じで読めばそこまで気にならないかな、と思います。
そもそも子供向けなので、主人公の万能感やご都合主義も、子供をワクワクさせるには必要な要素かも、とも思いますし。
子供心に返って、軽くファンタジー世界に浸りたい方は読んでみてはどうでしょう。